Arvo Pärt : TRACTUS

 人生のターニングポイント、つまり私の場合は昨年8月末の食道がんの宣告でしたが、その時点からしばらく経過してこころが落ち着いてから聴くようになった作曲家がいます。アルヴォ・ペルトがその1人です。

いちど、がんを宣告されると、人生の残りは思っていたものより相当に短くなると感じるのは避けられません。まだ、再発とか転移などという言葉は主治医の先生からはありませんが、この自分の遺伝子と密接に結びついて、命の裏側で遺伝子とがんの間でどのような情報伝達がはかられているのかはまったく知るよしもありません。いまは淡々と過ぎていく瞬間、瞬間に楽しみを見出す。これしかありません。今後も。

そういう自分にとってアルヴォ・ペルトのピュアな音と静寂の世界は細胞レベルに沁み込みます。音楽のジャンルを超えて、いま存在する自分の姿、かたち、こころ、それと、外の世界。それらをたっぷりと味わいなさいって語りかけてきます。

そういう音楽が、アルヴォ・ペルトだと思っています。68歳にしてすばらしい音楽に出会えることができました。



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